菊地吉正の【ロレックス通信 No.189】|「どっちを選ぶ」 1990年代に併売されていたGMTマスターの “ I ”と“ II ”、その違いとは?

 ロレックスの旧型スポーツモデルの中で人気が高いもののひとつに“5桁レファレンス”と呼ばれるものがある。これは単に型番が5桁だったためこう呼ばれるものだが、その後継となる6桁レファレンスからは、様々な点で改良が加えられたために、特にGMTマスターについては、セラミックベゼルになるなど作り自体が現代的にガラッと変わることから、アルミベゼルで古典的な雰囲気が残ることと、インサートが簡単に変えられるためベゼルの色を変えて楽しめる最後のレファレンスということもあって人気はいまだ根強い。

【編集部が撮影】初代GMTマスターのパンナムモデルが何と日本にあった!

 今回は、ステンレススチール仕様だけでも5桁レファレンスが全部で4種類もあったGMTマスターから、1990年に登場し約10年間併売された“GMTマスター(以降、実際はモデル名に付かないがわかりやすくここでは“ I ”と呼ぶ)”のRef.16700と“GMTマスター II ”のRef.16710に着目してみたい。

 “ I ”が製造された期間は1990~1999年、一方の“ II ”は1990~2007年。見た目はほとんど同じだが、搭載するGMT機能を装備した自動巻きムーヴメントは前者がCal.3175で後者はその進化版である3185が搭載されている。そのため1番の違いとなるのは、時針だけを単独で動かすことができるかどうかであり、前者は可動しないタイプ、後者は可動するタイプという点が大きなポイントだ。つまり、“ II ”は“ I ”の後継機として2000年頃から1本かされる。

 もう少し詳しく説明すると、時針が単独可動できるようになったことでGMT機能の利便性が大きく向上した。例えば日本から時差8時間のパリに行ったとしよう。パリに到着した際に “ I ”の場合は、GMT機能が無い一般的な時計と同様に、時分針(赤いGMT針も常に連動)を動かして、パリの時間に設定する。その後にベゼル上の▽マークを同じく時差8時間分回転させてGMT針の位置に移動し、出発地であるホームタイム(日本時間)を設定するという流れになる。

 対して“ II ”は、時針だけを動かしてパリの時間に合わせるだけ。赤いGMT針は時針だけを動かしても分針とともに動かないために、そのままベゼル上の数字で出発地である日本の現在時間を表示し続ける。つまり、ホームタイムを設定するためにベゼルを動かす必要がないためひと行程減るというわけだ。

Ref.16700

ただ、ここで疑問がひとつ。ではなぜ “ II ”のベゼルは回転するのかということ。ロレックス 偽物 GMTマスター最大の機能は同時に二つの時間帯を表示できる点にあるが、常に確認したい時間は現地時間と出発地のホームタイムだけとは限らない。そこでホームタイムとは別の都市の時間を知りたい場合に回転ベゼルを活用するというわけだ。例えば日本ではなく香港の時間を常に把握したいとなった場合には、日本との時差が1時間のため1目盛り分だけベゼルを右に回転して使うというわけである。

 このようにGMT機能だけでみると確かに“ II ”に軍配が上がるが、“ I ”には“ II ”よりも利便性が高い点が実はある。それはデイト表示だ。“ II ”の場合は、日付けを合わせる際にはクイックチェンジが使えないため、時針だけをぐるぐる回して日付けを進める必要がある。それに対して“ I ”は、時針を動かせない代わりにクイックチェンジ機能が使える。そのため日付けだけをリューズを回して直接調整できるというわけだ。

上がトリチウム、下がルミノーバが使われている表記

Ref.16710

 「何だそんなことか」と思われるかもしれないが、日付けは合わせなくても気にならないという人は、迷わず“ II ”だろうが、きちっと合わせないと性格的に嫌だという人にとっては、クイックチェンジ機構の有無はけっこう悩みどころとしては小さくはないのかもしれない。
 
 さて“ I ”はステンレスモデルのみでベゼルバリエーションも青赤ツートンと黒の単色のみ。“ II ”は先の2種類にプラス黒赤ツートンの3種類、それに加えてコンビやゴールドモデルもラインナップしている。そして気になる実勢価格だが、“ I ”は140万~200万円代前半。一方の“ II ”は140万円前後から200万円台とかなり幅が広いが、製造期間も長かっただけにタマ数も豊富に流通している。

ちなみに“ I ”は生産終了近くの98年頃に夜光がトリチウムからルミノーバに変更されたため、6時位置の「SWISS-T<25」から「SWISS」あるいは「SWISS MADE」に変更になった。そのため後者は生産期間がわずかしかなかったため高めで流通する。